理事長あいさつ

本当は隠しておくべき事なのかもしれませんが


少しだけ私の経歴について書かせて頂きます。

実は10年程前、大手メガネチェーン店に勤めていた私は脱サラをして
安売りメガネ店を経営をしていたのです。

まだ大手チェーン店が安売りをしていないころ、
質の悪いフレームやレンズを売りまくっていたのです。

土日ともなると1日60本を一人で販売していました。
こうなると検査などしている時間はあるはずもありません。
今の安売メガネ店もこの状況は変わっていないと思います。

しかしその後、メガネチェーンが一挙に参入してきて
売上げは年々半減。そしてついにお店は閉鎖。

価格競争になるビジネスの怖さを知りました。

結果としてメガネのフィッティング技術や加工技術、接客技術は
身についたのかも知れませんが、それだけでした。

そんな時、元の従業員がこんなのありますけどと
教えてくれたのが両眼開放屈折検査という検査方法でした。

これが視力検査の世界に足を踏み入れたきっかけです。

もちろん最初は、理論的には納得できないわけではないけど
うさんくさいなぁと半信半疑でした。

元の従業員はそのころ、ワゴン車でメガネを販売する方式で
農協などを廻って販売していたので、ついていって見せてもらった時
やっと納得したのです。


「ぼっけー、よぉ見えるのぉ」


お客がみんなこう言って驚くんです。
念のため訳すると「すごくよく見える」です。

今思えば、この技術だけで、きちんと合っているはまでは
言いがたく、しかも車という劣悪な環境での視力検査です。

それでも、この技術は片目ずつしか調節していなかったものが
両目を一緒に調節するという大きな変化があるので
劇的な効果があったのです。


安売量販メガネ店を閉じた後、私はフレームの在庫を抱えていた事もあり、岡山県の玉野市の知り合いの店舗の一角を、ただ同然で借りて細々と営業をしていました。


一見、環境的に不利な状況だったのですが、この技術を提供するには、客数を捌くという環境では絶対に不可能なわけですから、私にとって幸いしました。


少ないながらも来るお客様ひとりひとりが感謝してくれる。
この喜びは何よりも変えがたいものがあったのです。


安売り量販では決して味わえなかったこの気持ち。

もしかしたら、こんな私でも、メガネレンズを通じて
社会の役に立てるのではないかというような考えが
芽生えてきていたのです。

そうしたある日、噂を聞きつけたアマチュアレーサーが来店してきたのです。


なぜ岡山の田舎町にわざわざ隣県から来たのか


最初は不思議でした。

しかし理由を聞いてみると、どうやらレースには遠近感が必要で
そのためにはきちんとしたレンズが必要だということでした。

なるほど、両眼バランスを調節したレンズでは結果として
遠近感に関することも改善されます。


でもプロならともかくアマチュアでもこんなレンズが欲しい人って
いるんだなぁくらいに思っていた数ヵ月後。

驚くことに全国から問い合わせの電話が鳴り始めたのです。

とても気に入ってくれたアマレーサーが自分のホームページに
電話番号が書いてくれたらしいのです。

そして全国からお客様が来店されるようになってきました。
岡山の片田舎に宣伝なしで全国からお客が集まってくる。


この事実には驚くばかりでした。
もちろんレースの世界といった限られた世界ですので
最初はそんなたくさんの人が来ていたわけではありません。

ところが自分に合ったレンズが必要だったのは
レースの世界の人だけではなかったのです。

それはある一人のお客様の話がきっかけでした。


「このレンズって、もしかして深視力検査に効きませんか」


何でこんな聞きなれない専門用語を知っているのか
最初は驚きましたが、理由を聞いて納得しました。

深視力とは遠近感に関する視力のことです。

実は大型免許を取得・更新する時に深視力検査という
ものが必要だったのです。


このテストをクリアしないと免許がなくなってしまう。
大型免許とはプロドライバーで生活の掛かっている人ばかり。

まずはこの人たちに知ってもらおう。

そして本格的に深視力検査専門でホームページを立ち上げたのです。

結果、北海道から沖縄まで全国からお客様が
やってくるようになりました。

最初の頃は、来てくれることが嬉しくて
空港や駅まで送迎までしていました。

でもあまりに多くなりすぎて、さすがに時間がなくなってきたのと
お客様の利便性を最優先して岡山の田舎から
岡山駅前に店舗を移転することにしました。


オーダーメイドレンズ専門に


玉野から岡山駅前に移転した時に思い切って
メガネ屋というカテゴリーを完全に卒業しました。

初めて来た人はみんな驚きますが
完全に知っている人しか入ってこないお店です。

駅前なのに誰も入ってこない変なお店になってます(笑)
しかもメガネは他で買ってきてくださいという不思議なお店です。

もちろんメガネもこの通り、一通り揃えてはあるのですが
やはりフレームデザインこそがメガネを掛ける
醍醐味でもあるわけです。
レンズの矯正が極度に必要な場合はメガネフレームも大事ですので数百本は置いてありますが、基本的にフレームはメガネ屋に任せてます。

程なく、他のメガネ店も深視力検査をするようになってきました。
全国にできたこともあり当店の客足は落ち着いてきました。

多少時間のできた私は、自分の技術をさらにあげようと
視力に関するありとあらゆるものを吸収しようと行動をしました。


なぜなら実はこの頃は自分の実力に自信がなかったのです


ですので徹底的に視力に関するセミナーや講習会そして
文献や学校などありとあらゆるものに参加してきました。

お客様が納得していただくのもありますが
何より自分自身が納得したいということもありました。

時にはひとりに4時間も掛けてやっと合わせたりと
様々な経験を重ねていきました。
(さすがにこれはお客様にも相当の負担があったので、もうしませんが)

私に様々なことを教えてくれた先生方も
日本で5名くらいいるのですがこの先生方には
さすがに、かなわないのかもしれません。

何せ30年近くも研究と実践を積み重ねているのですから。

そして唯一私が勝てるとすれば、先生方の理論の納得した部分を
全て取り入れている部分です。

レンズを合わせるという結果はひとつなのかもしれませんが
お客様の好みやアプローチ方法など微妙に最終到達点は違います。


最終的にお客様にとって満足されるレンズとは何なのかまでを
考えるという点で私は自分なりの理論を構築しつつありました。

でも私はそれだけでは満足できませんでした。


世界中を廻りレンズの研究に明け暮れる


でも世界ではどうなのだろうか。

最初に書いたとおり日本は視力検査の国家資格がありません。
対して諸外国は国家資格がある。

その差は歴然としてあるだろう。
その思いがどうしても頭をよぎります。

ですのでレンズの本場のドイツ、技術の本場のアメリカに行って
実際はどうなのかの研究をはじめたのです。

その結果、ドイツ、アメリカの技術を取り入れ
私の技術は、さらに数段アップしたわけですが
残念ながら世界でもメガネ屋は同じ状況のようでした。

他国のメガネ屋は国家資格保有者ですので
確かに技術や知識は日本よりは持っていました。

ところがやはりメガネ屋はメガネフレーム屋なのです。レンズに時間を掛けられないので、わかっていながら適当なところで調節していました。


まさに相手を見てレンズを作成するという感じです。
そして所詮、資格は資格でしかないのだなと思いました。


ここまできて完全に世界レベルでも十分通用することを実感しました。

ところが私の技術力が上がったことによって
今度は別の問題が出てきてしまったのです。


レンズが作成できない!


日本で基礎を学び、圧倒的な検査数で実践を積み重ね
そしてアメリカ、ドイツの技術を自分の技術に応用して
完全に自分なりの技術として誰にも真似のできない技術を
マスターしました。

ところがそれゆえに問題が発生してしまったのです。
それがレンズが作成できないという問題でした。

私の検査では片目に最大6枚のレンズを組み合わせて調節を行い
そしてそれを数値化してカルテにするのですが
そのカルテの通りのレンズが作成できなくなることが多くなってきたのです。

6枚のレンズでは実現できても
それが1枚のレンズにできないのです。


日本には大手と呼ばれるメーカーが4社
小さいメーカーが20社くらいあります。

ところが大手はおろか小さいメーカーまで
私の要求するレンズは難しすぎて対応できないことが多いのです。

もちろん、その人によって使うレンズが違います。
レンズメーカーも得意分野があります。

この問題は実は今でも解決していなくて
1件1件確認しながら、できるかどうか調査しないと
完成できるかわからないのです。

でも最近ではレンズ屋の方でもプライドを持ってきたらしく
こういうのなんだけどと言うと「やらせてください」といって
くれつつあります。

レンズ会社について、もう1点だけ話すと
安売メガネ店では必ず大手レンズメーカーを薦めてきます。

理由はお店側もお客様側も双方がメリットがあるからです。
お客様にとってもは安心感と一流メーカーという高級感が得られる。
お店側は大手メーカーの方が仕入れ単価が圧倒的に安いのです。

そういった事情もあって当店では大手メーカーのレンズは
ほとんど採用されることはありません。
(現在は大手のT社が理解してくれるようになり結構採用してます)


やっと思い通りできると思ったのですが


残念ながら簡単にはいきませんでした。

その頃のお客様は深視力検査にパスすることが全てという
目的のお客様がほとんどでした。

しかし、いくら調節しても誰でもが100%深視力検査に
合格できるものではないのです。

試験はゼロか100の世界ですので、深視力検査に合格できなけば
彼らの望みは達成されることがないのです。

特にプロドライバーの方が免許更新ができないということは
即、失業を意味します。


厳しい言い方をすれば、そのような状態の方が運転するべきではない
わけなのですが、私が印籠を渡すには荷が重過ぎたのです。


実は深視力がでるかでないかは1発で判断できます


深視力を掲げているお店では深視力検査に困った人が
たくさんやってきます。

その中でも全く解決できる見込みが無い人が
20%程度はいらっしゃいます。

残りの80%は検査する人の腕の見せ所ですが
全く見込みの無い方は、あるひとつの簡単な検査を
することだけで判断できてしまうのです。


つまり1分で結果がわかってしまいます。
私には他の深視力検査をしている人の能力まではわかりませんが
この検査をできない人はさすがに一人もいないはずです。

結果的には、そこで検査終了。
あなたは危険ですので他の仕事をしてください。
残念ですが私にできることはありません。

ということになるのですが、なぜかそういわれた方が
最後に私のところに来る事が多かったのです。

それも1回や2回というレベルではありません。

結果は同じでもお客様は不安を抱えて真剣に悩んで
勇気を出して来店されたわけです。

それを1分少々で判断されても気持ちの整理がつかないし
最低でも30分は説明をされなければどうなるのか。


湧き上がるのは怒りだけです


もちろんその結果を変えることは当然できません。
ただ、そのような方には検査をしながら、この検査でこのような反応がでない
だから難しいというような納得してもらえる説明と検査をしてあげていました。

そんなことを続けていたら今度は
逆に私が精神的に参ってしまったのです。

結果的に絶対回復不可能な20%に入らない方でも
難しい症状で時間を掛けてレンズに慣れないとならない

そのような方のレンズを合わせることは
かなりの技術が必要とされます。


常に緊張感を強いられる相談を受け続けていた私は
完全に疲れ果て、カウンセラーに自分のやっていることの
是非を聞きにいったりと迷走することになってしまいます。

でも不思議なものでそのカウンセラーが私の技術を気に入ってくれ
自分のお客様を紹介してくれるようになってきました。

その中のひとりのお客様にまたしても私は救われることになります。


回復不可能な方の最後の砦として


そのお客様は既に目の手術をしていて、医者からもこれ以上視力が
よくなる見込みはありませんと言われ諦めていた方でした。

事前に相談を受け、状況からするとまず私にできることはない
とお断りしたのですが、どうしても検査して欲しいと言われ
やむなく検査をすることになったのです。

ところが、結果として実際に検査をしてみると
今よりも格段に見えるようになってしまったのです。

目と脳は密接に関連していますので、ありえないことはないとは
思いますが、プラシーボ効果なだけなのかもしれません。

このお客様の感動のされ方があまりにも大きく
かつてワゴン車で見たあの光景を思い出したのです。

「これが本当にやりたかった事だったんだ」

自分をやっと取り戻した瞬間でした。

深視力が出る出ないといった結果だけにこだわらず
その人にとって最善のレンズを提供することこそが
私の生まれてきた意味なのではないだろうか。


大げさかも知れませんがそう思ったのです。


調子の悪い方が続々と


そのカウンセラーの方の紹介は続きます。
やはりカウンセリングを受ける方はどこかしら調子が悪いわけです。

それが目にあることも少なくはないのです。

それだけではありません。
カイロプラティックを営む方からの紹介なども増えてきたのです。

目と脳は密接に関係があり、肩こりや頭痛など
体の変調が目が原因なことが多いことを
彼女たちは理解しており、私を紹介してくれたのです。

とても充実した日々になってきてはいたのですが
この時期に自分の弱すぎるマインドの修行をしておく必要を感じました。

一見、視力とは関係のないコーチングの資格や
NLP(神経言語プログラミング)といった心理学の資格を取得したりと
マインド的な側面も研究したのもこの時期です。

はじめはレンズを作成することは経験が重要だと思っていたのですが
ここまでセンスが必要なのだと気づいたのも、この時期でした。


途中までのレンズの選択的な所までは誰でもたどり着ける。
(それでも3000人以上の方の視力検査を行いましたが)

しかし、最後の微調整ができるとできないで、大きくレンズの出来が
変わってくることを次第に体感してきていたのです。

いかにその人の望む合わせかたをするかが大事なのです。
こちらが決め付けてはいけないのです。

ぴったり合ったレンズという話からは、ちょっと矛盾するのですが
この合わせ方こそが、レンズ調整のキモなのです。

決して機械ではできない相対で話しながら出ないと出来ないものなのです。


そんな中、次にやってきたのは学校の先生の子供でした。


遠くは見えても、近くが見えない


その子供は近見視力不良という黒板の文字は
見えるのだけれど、教科書が見えないという子供でした。

現在学校で行なわれている視力検査は
遠くが見えているかしか調べません。

学校の視力検査では近くが見えない子供は発見できないのです。

老眼のように、以前見えていたという経験がある大人なら
視力の低下が自覚できます。

しかし、子供は見えたという経験がありませんので
近くがぼんやりとしか見えなくても、それが異常とは思わず
普通のこととして受け入れ、自分から近くが見にくいとは訴えないのです。

ですので本人は気づかないのです。

黒板が見えないよりも本が読めないほうが
勉強がはかどらず、学習能力が低くなります。


つまりこの部分を矯正してあげると学力がアップする可能性が大きいです。
頭の良くなるレンズといっても言い過ぎではないかもしれません。

近見視力不良は中々発見ができないもの。
いいえ発見できたとしても、レンズの精度が悪ければ
余計に苦しむことにもなりかねません。

今の私が一番力を入れているのは子供のレンズです。

私に唯一できること。それはレンズを合わせることだけ。

回復力のある、そして未来ある子供に少しでも普及させることで
少しでも世にレンズのことを訴えていく。

これこそが私のライフワークと考えています。